【文劇喫茶】シリーズ『それから』/感想、演劇に呑み込まれた。
私が魅了されてやまない役者・平野良さんご出演の舞台作品を観に行って参りました!
ので感想をボロボロと~
文劇喫茶シリーズ 第一弾 舞台【それから】
http://www.clie.asia/sorekara/
原作:夏目漱石「それから」
2017年5月3日(水・祝)~5月14日(日)
俳優座劇場
*当日券あり
(日替わりゲスト:寿里・水石亜飛夢・藤原祐規・碕理人
演出:山田佳奈(ロ字ック)
脚本:田中洋子
(敬称略)
代助は良家の次男坊である。
学生時代から悠々自適な生活を送り、卒業後は仕事をせずに、実家から貰うお金で生活をし、社会とは距離を置いて、自由気ままに生きていた。
そんな代助の元に親友の平岡から一通の手紙が届く。
「昨日二時に東京着、明日午前に会いたし」
久々の再開を果たした親友と、その妻・三千代との出会いが、代助の運命を思わぬ方向へと導いていく…。<公式フレイヤー裏より>
ざっくり言うと三人芝居の!不倫劇です!
丁寧で上品で頑固な“生きてる”作品に仕上がってた。
丁寧にそりゃあもう丁寧に作りこまれています。
関わった人全てのこだわりと情熱が注がれたみたいな。
私の大好きなやつ!!!!
- はじめに
ストーリー展開はさすが純文学!
でも見やすい。驚くほどスッと世界に入れて楽しめました。
淡々と誠実にお話は進んでいきます。
登場人物の様子や関係性、ひいては自分の感覚が少しずつおかしくなっているのに客は気づかない。いや最初からおかしかったのかもしれない。
純文学ならではの巧妙な精神掌握トリック?
本には文字情報しかない、更に純文学は小難しい。故に発動するトリックかなとアホな私は思ってたんですが、そんなことないんだね。
今回演劇で、視覚・聴覚・触覚(雰囲気)・嗅覚情報、色々与えられてたのに、まんまとトリックに引っかかちまった!気づかぬうちにじわじわ精神揺すられてた。
それを為し得たのは、演技、演出、照明、舞台セット様々諸々の手柄っすわ!
ほんっと浮世離れした独特なものばかり。でもこれ全部人間がこさえたものなんだよ!?
現実に似ている非現実に来たみたいな感覚になる。
だから余計に舞台にひたりひたひたる。
本読み終わった後の脳の浮遊感。観劇後はあれと同じ感覚に襲われる。
すこぶる純演劇でした。
- 役者
三人芝居だからね!役者の働きは注目するとこ。
芝居が猛烈です。
御三方、魂燃え尽きんじゃねーかって。いつブッ倒れても変じゃないと私は思ってる。
だって観てる私も気絶しそうだもん。精神が擦り減る。ドライアイがマッハ。快感。
演技が上手いとかそういった話じゃない。圧倒されるの。呑み込まれるの。
私がそれからで、それからが私でみたいな(???)
雁字搦めな人間模様・感情をドロリと静かに深く演じてらっしゃる。
混沌と疑心と葛藤、憔悴、狂気、恋慕などなど。相手への思い遣りと、止められない自分の心とかとか。
ずっしりとした芝居をなさるんです。
聞いて聞いて!公演時間約2hours、平野さん出ずっぱりなんです!
化け物か?いいえ人間です。いいえ演劇妖怪です。いいえ平野良さんです。
快活な長セリフが止まらない。
ちょけた笑い顔とプリチーなニヤケ顔 、苦悶とダダ漏れる焦燥感と。。
色んな感情を魅せてくれる。
笑顔はひとつじゃないし、困り顔もひとつじゃない。
繊細な一期一会の感情を、表情と空気で感じさせてくれる。
平野さんは空気を読み、操るソルシエ系役者だと私は思ってます。
平野オンステージ言われる所以もそこじゃなかろうかと。
あの時、舞台は平野さんのもんだった。たまらん。
己の心臓を握るように叩く、花の香りを胸いっぱいに吸い込むシーンが大好物です。
エロシチズム。健全なような不健全なような。
最後、代助狂います。狂気に堕ちた平野さんの芝居たまらない。
純粋に怖い。リアルに怖い。いっそ気持ち悪い。たまらない。
あ~まーた平野さんへ一層惚れこんでしまったオーマイガッ
帆風さんは終始ブレない。
所作も声の通りも一貫して凛としている。
気が滅入ってる時も、取り乱している時も、喜びに溢れてる時も、やっぱり凛としてる。
しゃんと背筋を張って、いろんな感情を表せる帆風さんは凄まじいと感じました。
今立さん 、私梅子の大ファンです!!!
私は芸人としての今立さんをチョロっと見たことのある程度だったんですが、
芸人業をフル発揮したお芝居をされるな、と。
数役を演じ分け、作品にユーモアを差し込みつつ、話の転換を促すような役割。ストーリーにリズムを付けてくださる。
キャラクター入れ替わり芸がスムーズかつ、それぞれが生き生きとしていたのは、今立さんの本業で培われたスキルあってのことなのかな、と。
そんな御三方が織り成し、雁字搦めになり、熱が上がっていく舞台はもう堪らんです。
毎回息も絶え絶え(私が笑)猛烈なのですが、
公演重ねるごとに役がどんどん馴染んでくんです。
まだ煮込めたのか!?って驚愕する。
これ以上煮込んだら煮崩れしない?!まだいけるの?!いけてる!やばい…って。
猛烈だ。
- 舞台演出など
会場に入った瞬間、わあっと声出た!
セットがなんとも独特なつくり。歪んでいる。下手に洋、上手に和。芸術品。
役者が登場した時もわあってなった。
明治のおべべたまらん。普段見えない身体のラインとか見えていいですね(笑)
照明も光と影をうまく利用した演出だったり、ぼんやりした灯り、
場面の感情に沿って物理的に染め上げられる壇上。色味も独特ときてる!
独特に塗れた空間だった。
明治のお話なのでまあ現実に近いのだけど、どうしても非現実みがすごい。
人のこだわりが随所に込められるとこんなにも夢うつつ気分になるんだね。
脳がおかしくなってく。好き!
あと、これだけは言わせて?
畳!愛してる!日本人でヨカッター!
ゴロゴロ寝ころんだり、ギッタンバッタン大立ち回りしたり、
畳の淵をバランス取りながらてとてと歩いたり!(主に代助・平野さんが)
畳の擦れるザッシュって音も好き。胡坐も正座の姿も良い。
畳あいしてる。
最後の演出、初見時は相当驚きました。真っ赤になった。
どうしようもない不安感に焦る焦る。からの、最後の最後で全部真っ赤になった。
焦るもくそもない。真っ赤です。
ありがとうございました!
- ゲストコーナー
いわゆる箸休めらしい。(話は途切れず進んでるよ!)
代助(平野さん)と寺尾(ゲスト役者さん)がワチャワチャします。
緊迫した場面の後、急にバーンと訪れるこのシーン。
温度差すごくて驚いたけど、今では寺尾まだかな…会いたいな…って気持ちです。
ズバリ言うと話の腰折る感じあるので、苦手な人は苦手だと思います。。
ワチャワチャかわいいけどね!
- 最後に
総括すると、やんべぇ舞台に出会ってしまったEND。
人のこだわりと情熱が尋常じゃない。本当に頑固な作品だと思う。
従って観る側も私の解釈は譲らねえって頑固な面引き出される。
この舞台作品が上演される同じ時代に丁度生きていれて良かった。
この良さがわかる、味わうことができる歳に出会えて良かったです。
運命だな。
心が演劇を求めてる方は絶対観るべき!
丁寧で誠実で呑み込まれるような演劇です。
演劇好きだ…(陶酔)ってなるから。
#文劇喫茶それから
以上、ありがとうございました。